ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)とは
胃粘膜に生息して、慢性的な炎症を起こす細菌です。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎などの主な原因になっていて、胃がん発症にも関与しているとされています。
胃の中には強力な胃酸や消化酵素があるため、口から入った細菌は殺菌されてしまい、生息することができません。ただし、ピロリ菌はウレアーゼという酵素の働きで周囲を中和して生息を可能にしています。感染によって慢性的な炎症が続くと胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎に進行することがあります。この萎縮性胃炎は胃がん発症リスクがとても高い状態です。ピロリ菌に感染している場合、そうでない場合よりも胃がんリスクが10倍以上高くなると指摘されています。
ピロリ菌の感染経路
はっきりとした感染経路はわかっておりませんが、ピロリ菌に汚染された井戸水などを介した感染や、ヒトからヒトへの感染が考えられています。
胃酸分泌が弱い幼少期までに感染するとされていて、成人してから感染することはほとんどありません。ただし親から子へ感染してしまう可能性があると考えられているため、また子どもを持つ前に除菌治療に成功することで、次世代への感染を防ぐことができます。
ピロリ菌と胃がんについて
ピロリ菌に感染している状態が続くと、胃粘膜が炎症を繰り返します。慢性的な胃炎が進行すると胃粘膜が萎縮する萎縮性胃炎を起こすことがあります。この萎縮性胃炎は胃がん発症リスクがとても高い「前がん状態」と呼ばれています。除菌治療による発症リスク低減や定期的な胃カメラ検査による早期発見に努めることが重要です。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染の有無を確かめる検査です。細菌そのものを確認する検査、細菌が起こす反応を調べる検査、細菌による酵素反応などを調べる検査などがあります。検査を大きく分けると、胃カメラ検査時に組織を採取して調べる検査と、それ以外の方法があります。内視鏡検査で胃炎と診断された方についてはピロリ菌の検査が保険適用されます。そうでない方はピロリ菌の検査は自費診療になります。
胃カメラ検査で行うピロリ菌感染検査
組織鏡検法
胃カメラ検査で胃の組織片を採取して染色してから顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認します。
培養法
胃カメラ検査で胃の組織片を採取して1週間程度の期間培養し、ピロリ菌の有無を確認します。
迅速ウレアーゼ法
胃カメラ検査で胃の組織片を採取し、ピロリ菌が生成するアンモニアの量を調べて、ピロリ菌の有無を確認します。検査当日または翌日までに検査結果がわかります。
胃カメラ検査を行わないピロリ菌感染検査
尿素呼気試験法
診断薬を服用して呼気(吐く息)を採取し、ピロリ菌の有無を確認します。
抗体法
血液や尿を採取して、ピロリ菌抗体を測定する検査です。
抗原法
便を採取してピロリ菌の反応を調べ、感染を診断します。
ピロリ菌と除菌治療
衛生状態が改善している先進国ではピロリ菌の感染者数が減少していますが、日本には今でも3,500万人程度がピロリ菌に感染しているとされています。感染していても除菌治療によりピロリ菌を除去することができ、それによって炎症や潰瘍の再発も防ぐことができます。ピロリ菌感染の有無は検査ですぐに確かめることができ、除菌治療はお薬を1週間服用するだけです。ピロリ菌に感染していて、胃カメラ検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断された場合には、ピロリ菌の除菌治療を健康保険適用で受けることができます。
除菌治療の保険適用について
胃カメラ検査で、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断された場合は、ピロリ菌検査と2回までの除菌治療を保険適用で受けることができます。
ピロリ菌除菌治療の流れ
1ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染検査を行って、感染の有無を確認します。
2検査結果の確認
検査結果が陰性だった場合、除菌治療は必要ありません。
陽性だった場合、除菌治療をご希望される場合には治療を行います。
31回目の除菌治療
抗生剤とその働きを強める制酸剤を朝夕の1日2回、1週間服用します。
4除菌治療の結果確認
除菌治療は失敗する可能性もあります。判定検査は、服用終了後4週間以上経過してから行います。
除菌判定で陰性になった場合は除菌が成功しているため、治療は終了となります。
陽性だった場合には、2回目の除菌治療を健康保険適用で受けられます。
52回目の除菌治療
抗生剤を変更して後は1回目と同様に、1日2回朝夕、1週間服用します。
6除菌治療の結果確認
除菌判定も1回目と同じタイミングで行います。
1回目と2回目の除菌治療でほとんどの方が除菌に成功しますが、失敗した場合は3回目の除菌治療も可能です。ただし、3回目からは自費診療となります。
ピロリ菌の除菌治療成功率
1回目の除菌治療の成功率は80~90%程度、2回目の除菌治療の成功率は90%程度とされています。